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NaOH溶液浸漬法のご説明

TEL. 076-255-7965

〒921-8164 石川県金沢市久安5丁目260番地

NaOH溶液浸漬法についてNaOH solution immersion method

1.試験法の経緯


北陸地方ではコンクリート用骨材として主に河川産骨材が用いられてきましたが,一部の火山系岩石(安山岩,流紋岩および凝灰岩)とアルカリ量の多いセメントを使用したことによりアルカリ骨材反応(以下ASR)が発生し,多くの構造物に被害を与えています。当該地方のASRは,主に1980年代より顕在化したものですが,当時のコアによる残存膨張性の評価は,JIS A1146「骨材のアルカリシリカ反応性試験法(モルタルバー法)」に準拠したコアを用いた湿気槽養生法(JCI−DD2,温度40℃・相対湿度95%以上の養生)によるものでした。しかし,コアは試験時にほとんど膨張せず,「残存膨張性なし」と判断されました。このため,構造物の補修は1988年よりひび割れ注入と表面被覆を実施してきましたが,補修後数年で表面被覆材にひび割れやふくれが発生することが多くあり,コアによる残存膨張性の評価と現場でのASRによる劣化の実態が相違する結果となりました。このような理由で,15年ほど前よりコアによる残存膨張性の評価手法として外部からアルカリを供給するNaOH溶液浸漬法(温度80℃,1N・NaOH溶液浸漬)を採用した経緯がありました。当時は、この試験法をカナダ法、ASTM法と呼ぶ人もいました。今はNaOH溶液浸漬法に落ち着いているようです。本試験方法は、北陸地方を中心に採用されてきましたが、コンクリート診断士のテキストに掲載されてから、全国的に実施されるようになりました。



2.NaOH溶液浸漬法の特色


NaOH溶液浸漬法の特色を以下に示します。
  1. コアの直径を大きくすると膨張率が低下する。
  2. 温度依存性が高く養生温度を下げるとコアの膨張率は低下する。
  3. NaOH溶液の濃度(0.5〜1N)では膨張率は大きく変化しない。
  4. 北陸地方の川砂利・川砂での検証結果では、アルカリ骨材反応性の岩種(安山岩、流紋岩、溶結凝灰岩、凝灰岩、頁岩、チャート)が多くなれば多いほど膨張率は増加する。
  5. 構造物での傾向でASRが進行する一方で、NaOH溶液浸漬法による膨張率が低下する。


3.野村研のNaOH溶液浸漬法


NaOH溶液浸漬法はコアの一次元(長さ方向)の膨張率の推移を測定するものです。当社ではNaOH溶液浸漬法の試験費をコストダウンするため、以下の試みを実施しています。
  • 1)測定はコンタクトミクロン・ストレインゲージを用いず、マイクロメーターを使用

コンタクトミクロン・ストレインゲージは、ダイヤルゲージを組込んだ測定器具です(写真1参照)。
1台130万円程度します。日本では1社しか製作しておりません。
当社では同じ分解能を有するマイクロメーター(約5万円/台、ミツトヨ製)を用いて測定しています(写真2参照)。
このため、マイクロメーターで測定できるよう測定点を工夫しています。

コンタクトミクロン・ストレインゲージ写真1 コンタクトミクロン・ストレインゲージ

マイクロメーター写真2 マイクロメーター
  • 2)NaOH溶液の使用量を節約→廃NaOH溶液の節約(環境負荷の低減)


コア径にあった養生層を使用することでNaOH溶液の使用量を節約しています。したがって、産業廃棄物にするNaOH溶液の量も少なくしています。
  • 3)コア長の測定時はコアの温度を約20℃にして計測


NaOH溶液を80℃まで上昇させることは危険です。当社では安全性確保のため、コアの温度を20℃程度に下げて毎回計測しています。

NaOH溶液浸漬法の状況を写真3〜写真6に示します。

測定用チップの取り付け写真3 測定用チップの取り付け

マイクロメーターによるコア長さの測定写真4 マイクロメーターによるコア長さの測定

NaOH溶液への浸漬写真5 NaOH溶液への浸漬

80℃での養生写真6 80℃での養生

4.その他


  • 1)コア径について

橋脚や上部工では太い直径のコアが採取することが難しいです。コア採取費用および埋め戻しの材料の節約、構造物をあまり傷めないために、当社では直径55mm程度のコアでの試験を推奨しています。

  • 2) 判定基準

残存膨張性の評価として「ASTM C1260」の基準を準用されている方が多いです。これは米国のモルタルバー法の試験基準です。モルタルバーは作製してまもなく試験するものです。セメントの水和反応も十分ではないと考えます。一方で現場から採取してくるコアはコンクリートであり、建設から数十年経過しているケースがほとんどです。水和反応が進み非常に緻密な状態になっています。同じ、試験基準値を用いることに疑問を抱きます。また、NaOH浸漬するモルタルバー法ですが、カナダでも採用されていますし、オーストライリアでも採用されています。しかし、国によって試験基準値が違うのです。それは国によって岩種が異なるからです。コアのNaOH溶液浸漬法は地域によって判定基準を設けるべきと考えます。私が過去に北陸地方で多くの構造物からコアを採取し、試験を行った結果、試験日数21日での膨張率が0.1%以上を残存膨張性ありと推奨しています。しかし、この値について最近、遅延膨張型の鉱物を含有する場合、判定基準をもう少し低くする必要があるのではないかと考えています。

  • 3)養生温度について

80℃の養生温度は、実際の構造物ではほとんどありえない環境です。これにより通常ASRを生じない岩石までASRを生じることも指摘されています。私もそう思っていました。しかし、最近ではNaOH溶液浸漬法では、将来ASRを生じる可能性のある岩種を的確に反応性させているのではないかと考えています。たとえば片麻岩や花崗岩は一般にASRを生じない岩種ですが、最近、この岩種でのASRが確認されています。NaOH溶液浸漬法の後ではこれらの岩種の一部からASRゲルを発生させているケースがあるのです。

  • 4) 試験費用


お見積作成を無料にて承っております。
しかし、ASRに対してNaOH溶液浸漬を実施すればすべてが評価できわけではありません。
その他の試験の組み合わせの一部として採用することを推奨します。


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