北陸地方ではコンクリート用骨材として主に河川産骨材が用いられてきましたが,一部の火山系岩石(安山岩,流紋岩および凝灰岩)とアルカリ量の多いセメントを使用したことによりアルカリ骨材反応(以下ASR)が発生し,多くの構造物に被害を与えています。当該地方のASRは,主に1980年代より顕在化したものですが,当時のコアによる残存膨張性の評価は,JIS A1146「骨材のアルカリシリカ反応性試験法(モルタルバー法)」に準拠したコアを用いた湿気槽養生法(JCI−DD2,温度40℃・相対湿度95%以上の養生)によるものでした。しかし,コアは試験時にほとんど膨張せず,「残存膨張性なし」と判断されました。このため,構造物の補修は1988年よりひび割れ注入と表面被覆を実施してきましたが,補修後数年で表面被覆材にひび割れやふくれが発生することが多くあり,コアによる残存膨張性の評価と現場でのASRによる劣化の実態が相違する結果となりました。このような理由で,15年ほど前よりコアによる残存膨張性の評価手法として外部からアルカリを供給するNaOH溶液浸漬法(温度80℃,1N・NaOH溶液浸漬)を採用した経緯がありました。当時は、この試験法をカナダ法、ASTM法と呼ぶ人もいました。今はNaOH溶液浸漬法に落ち着いているようです。本試験方法は、北陸地方を中心に採用されてきましたが、コンクリート診断士のテキストに掲載されてから、全国的に実施されるようになりました。
橋脚や上部工では太い直径のコアが採取することが難しいです。コア採取費用および埋め戻しの材料の節約、構造物をあまり傷めないために、当社では直径55mm程度のコアでの試験を推奨しています。
残存膨張性の評価として「ASTM C1260」の基準を準用されている方が多いです。これは米国のモルタルバー法の試験基準です。モルタルバーは作製してまもなく試験するものです。セメントの水和反応も十分ではないと考えます。一方で現場から採取してくるコアはコンクリートであり、建設から数十年経過しているケースがほとんどです。水和反応が進み非常に緻密な状態になっています。同じ、試験基準値を用いることに疑問を抱きます。また、NaOH浸漬するモルタルバー法ですが、カナダでも採用されていますし、オーストライリアでも採用されています。しかし、国によって試験基準値が違うのです。それは国によって岩種が異なるからです。コアのNaOH溶液浸漬法は地域によって判定基準を設けるべきと考えます。私が過去に北陸地方で多くの構造物からコアを採取し、試験を行った結果、試験日数21日での膨張率が0.1%以上を残存膨張性ありと推奨しています。しかし、この値について最近、遅延膨張型の鉱物を含有する場合、判定基準をもう少し低くする必要があるのではないかと考えています。
80℃の養生温度は、実際の構造物ではほとんどありえない環境です。これにより通常ASRを生じない岩石までASRを生じることも指摘されています。私もそう思っていました。しかし、最近ではNaOH溶液浸漬法では、将来ASRを生じる可能性のある岩種を的確に反応性させているのではないかと考えています。たとえば片麻岩や花崗岩は一般にASRを生じない岩種ですが、最近、この岩種でのASRが確認されています。NaOH溶液浸漬法の後ではこれらの岩種の一部からASRゲルを発生させているケースがあるのです。
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しかし、ASRに対してNaOH溶液浸漬を実施すればすべてが評価できわけではありません。
その他の試験の組み合わせの一部として採用することを推奨します。
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